事例紹介

ファシリティマネジメント(企業・団体等が組織活動のために施設とその環境を総合的に企画、管理、活用する経営活動)の優れた事例をご紹介します。

◆ 株式会社横浜銀行
【横浜銀行におけるファシリティマネジメントの実践について】
第13回(2019年)日本ファシリティマネジメント大賞 最優秀ファシリティマネジメント賞(鵜澤賞)

地銀大手のFM事例。2014年当初は、管財業務のアウトソーシングという形で始め、本店内にFMセンターというアウトソーサーを含めたFM推進体制を構築した。建築・動産・不動産・統括マネジメントの4グループにより、FMの業務範囲を拡大させながら、発展させてきている。初期には、FMデータベースの構築、劣化診断・現状調査を踏まえた中長期整備計画の作成などを行い、現在は施設資産の最適化、ファシリティコストの削減、省エネ改修を含めた環境施策など、幅広いFM業務を推進している。さらに店舗のFM標準による改善、SDGs(持続可能な開発目標)に対応した環境活動、行内のFM人材の育成など、FM戦略を経営戦略のひとつに組み込んでおり高く評価できる。

◆ 三菱地所株式会社
【三菱地所本社移転を通じたFM戦略の実現とまちへの展開】
第13回(2019年)日本ファシリティマネジメント大賞 優秀ファシリティマネジメント賞

日本を代表する不動産会社における働き方改革と連動するFM活動の事例。不動産業の本社オフィス改革として、また、他社改革事例の包括的かつ洗練された導入、トライアルによる実証実験と知見の積み上げがされている点、経営陣によりFM組織が構築されている点などが評価できる。ワークプレイスは、グループアドレス中心のABWとされている。ショールームとしての役割が意図され、顧客などに積極的に公開されている。自社の働き方改革にとどまらず、同社のまちづくり事業展開との連携をめざした活動としている。移転プロジェクトは2017年4月開始で2018年1月に移転したが、4年程前から新本社の取組につながるトライアル期間があった。将来的には単なる床貸しからサービスとしてのワークプレイス提供というビジネス改革を盛り込んだ経営戦略との連動が意図され、戦略的にFMの専任体制整備がされ、運営されていることも評価できる。

◆ 日本アイ・ビー・エム株式会社
【ビジネスの変化に迅速に対応する“AGILE OFFICE”】
第13回(2019年)日本ファシリティマネジメント大賞 優秀ファシリティマネジメント賞

日本IBM大阪事業所の移転にともなうオフィス改革についての応募である。同社は第3回最優秀FM賞を受賞している。老朽化していた自社ビルについて大規模改修ではなく、賃借ビル移転を選択し、時代のビジネスニーズに対応したワークプレイス改革を実施した。自社不動産売却によるキャッシュにより移転の投資、その後の賃借料をカバーするなど、不動産戦略、財務戦略も巧みである。ワークプレイス改革ではAgile Officeというコンセプトのもと、ABW、ICTツールの活用、約50%の大幅な面積縮減、オープンコラボエリアなど、豊富なFMの経験・知見の活用により、新しい段階に発展させている。わずか数か月程度で移転先ワークプレイスの計画から工事・移転までを終えるなど、スピード感がある。

◆ 青森県
【組織的かつ継続的なFMによる県有施設の利活用の取組 】
第13回(2019年)日本ファシリティマネジメント大賞 特別賞

第2回最優秀FM賞を受賞した青森県による、その後の約10年間の継続的FM活動の応募である。県有施設利活用方針に沿った活動により、総量縮減では8.4%の面積削減、11件の移転・集約化が実施されている。売却は195件、36億円の実績がある。また長寿命化改修工事に取り組み、約6万屬改修済である。2018年12月完了予定の本庁舎長寿命化改修工事では、減築による耐震補強工事の軽減化、環境性能の向上など、FM的視点による的確な施策が実行されている。本賞受賞後も経営への貢献、利用者への貢献など、約15年にわたり総合的な施策が継続され、実行に移されている点は高く評価される。FM推進組織の確立、公共施設等総合管理計画の施策策定とその継続的な実行という課題をもつ全国の地方自治体のFM活動において、そのよい見本といえる。

◆ 株式会社ガイアート
【FM(AM)手法によりアセットを有効活用し、地域の活性化を目指す】
第13回(2019年)日本ファシリティマネジメント大賞 特別賞

ISO・FMと連携するISO・アセットマネジメント(AM)の実施事例の応募。ガイアートはISO55001の認証取得企業で、軽井沢の有料観光道路「白糸ハイランドウェイ」について、ISO・AMに沿ったマネジメント活動を実施している。社会インフラ等のアセットを、コスト、リスク、パフォーマンスの最適なバランスにより適切に維持管理するとともに、アセットから多くの価値と便益を得るというAMの主旨に適った活動を展開している。具体的には、利用客への快適性提供、地域社会活性化への支援、従業員のモチベーション向上などを図るために、安定的な設備投資による舗装の更新、融雪効果の高い舗装仕様採用、雪氷作業の効率化の施策と併せて、町や観光協会との協働によるイベントの企画・運営などを実施している。利用者満足度評価など、FMの手法が活用されており、アセットマネジメントとファシリティマネジメントの接点を広げる活動を評価したい。

◆ 宮城県南三陸町
【復興まちづくりにおける庁舎づくり 〜まちの未来につながるFM 】
第13回(2019年)日本ファシリティマネジメント大賞 特別賞

宮城県南三陸町の本庁舎の再建プロジェクトを中心とする応募である。東日本大震災からの復興をめざす公共プロジェクトの1つとして、まちづくりにつながるシンボル的な存在といえる。従来の行政・議会機能に加えて「マチドマ」という町民活動・交流の拠点づくりが意図されている。また、適切な森林管理とその森林からの木材・木材製品を認証する「FSC認証」を取得した町産材を多用することで、南三陸杉のショールームとしても位置付けられている。竣工は2017年8月で、その活用についてはマチドマの運営のみならず、今後の施設活用・まちづくりへと進める組織体制、さらには同町の公共施設全体の最適化を図る全庁的なFMの推進体制構築を期待したい。

◆ 功績賞

上森貞行 ( 盛岡市財政部資産経営課 )

地方自治体の公共施設マネジメント−公共建築物に関する個別施設計画の策定方法に関する研究− (博士論文)

岩手県立大学大学院総合政策研究科から授与された2017年度博士論文の応募である。2014年に各地方自治体に総務省から公共施設等総合管理計画が要請され、3年内の期限があったが、その1年後に「策定済」と回答した先進的な75の自治体を中心に、公共施設マネジメントの内容を分析し、あり方を検討している。品質・財務・供給の3視点から個別施設計画の内容を分析して、再編・長寿命化・財源確保の3指標、それに加えて数値目標・施設評価・市民参加の3指標の計6指標により、自治体の特徴に応じた公共施設マネジメント手法を分類している。そして、大都市または近郊、地方中核都市、地方小都市の3つにおける特徴を分析している。地方自治体の職員による博士論文という点は評価できる。公共施設等総合管理計画は、引き続き個別施設計画をするよう要請が更新されており、各地方自治体の参考になる。

◆ 奨励賞

総務省行政管理局

理想の働き方のために 働く「場」を変える、オフィス改革の挑戦

働き方改革と連動する総務省のオフィス改革の応募である。改革導入の決断はトップダウン、デザインとプロセスは入社8年以内の若手中心のプロジェクトチームで行われた。検討から実施までは約6か月間で行われ、素早く実行されている。改革の内容は、グループアドレス採用、無線LAN導入、クリアデスクと紙書類の大幅削減、会議のペーパーレス化、固定電話廃止とPHS採用、モバイルPC化、テレワーク推進など多岐にわたる。2015年以降3年間にわたる行政管理局のほか、同省計4局の改革を実施している。その成果では、残業時間の削減、テレワークの実施、会議の準備から資料作成までの時間短縮、職員満足度・仕事のしやすさの向上など大きな改善が図られている。民間の最先端オフィスのような華やかさはないが、さまざまな障害を乗り越えた努力を評価するとともに、今後、全省的な業務管掌をもつFMの組織体制構築への発展を期待したい。

◆ 奨励賞

パナソニック株式会社

“A Better Workstyle“を目指すパナソニックグループのオフィス改革

パナソニックグループの国内10万人、600拠点の働き方改革とワークプレイスの改革に関する応募である。規模の大きさ、影響力の高さは特筆すべきである。現在はパイロットオフィス(PO)7箇所が竣工して使用中の段階であるが、今後、全社のオフィス改革の標準プロセス化による水平展開へと発展する見通しである。また、POの評価では能力発揮度、イキイキ度、場の選択、コミュニケーション度、心理的安全度の採用など新しい指標を採用しており、今後の継続的評価を見守りたい。日本を代表する電機メーカーの全社的な働き方改革、ワークプレイス改革の計画は称賛に価するが、本賞の主旨に則り実績で評価することとし、今後の発展に期待したい。

◆ 奨励賞

ノキアソリューションズ&ネットワークス合同会社

働き方改革を促進させるFM 〜自律と協業がもたらす新たな企業風土〜

オフィス移転にともなう働き方改革、企業風土の再構築をめざしたプロジェクトに関する応募である。2017年の第3四半期に統合移転し、1年未満の使用状況である。ワークプレイスでは、固定席からABWへの改革が中心だが、過去7年間に4回の企業買収で、異なる企業風土の混在、サイロ化で風通しの良くない状況という困難さを克服する改革といえる。面積28%削減などの効果もあげている。1名のファシリティマネジャーの他は、プロジェクト管理・運営維持などをすべてアウトソーシングしている。ファシリティマネジャーは経験と知見をもち、すぐれた活動を展開しており、さらなる今後の発展を見守りたい。

◆ 奨励賞

東京地下鉄株式会社合同会社

東京メトロ銀座線リニューアルにおけるFMの活用と実践

東京地下鉄の銀座線の駅舎リニューアルについて、主としてデザイン面に関する応募である。「駅舎のFM」を考えると、FMサイクルに沿った多様な業務がある。本事例は、その一部である駅舎のデザイン、ブランディングなどを重視したリニューアル計画についての応募である。リニューアル計画は5エリアのうち竣工しているのは1つで、残りは工事中である。実績面では十分とは言えないが、今後、「駅舎のFM」の総合的な展開をめざして、本格的にFMに取り組む突破口となることを期待して奨励賞とした。

◆ 奨励賞

川崎市

川崎駅東口周辺におけるリノベーションまちづくり 〜遊休不動産等を活用した公民連携によるFMの取組〜

川崎駅東口周辺のエリアマネジメントにより、まちの活性化を推進する取り組みの応募である。まちの活性化の手段としては、既存ストックのリノベーション、イベントによる「まちづくりビジョン」の共有、リノベーションスクール、公共空間の活用などがある。スキームは、公民連携で、民間主導のリノベーション投資としている(補助金はベンチャービジネス誘致に関して適用)。現在は、約2年間の活動実績で、その第1段階と考えられ、モデル地区でリノベーションにより2件が竣工したところである。川崎市のまちづくり課職員が継続的にキーマンとなり、すぐれたテナント誘致などを進めている。地方自治体の意欲的な取り組みだが、エリアマネジメントのレベルに必要な対象エリア全体の核となるリノベーション事例の増加や公共施設の新しい活用方法など、今後の発展を期待したい。

◆ 奨励賞

イケア・ジャパン株式会社

“メンテナンス” から “ファシリティマネジメント”へ

応募の表題「メンテナンスからFMへ」は、2013年から始まったイケアのワールドワイドの総合的なFM指針である。日本法人では2016年10月より導入プロジェクトを開始し、現在全店舗を含め38名がプロジェクトメンバーとしてFM導入を推進している。まだ総合的なFM活動を行うまでには至っていないが、同社店舗では、FM導入以前から、省エネ活動を実施して地中熱利用設備、夜間冷房によるデマンド削減、太陽光パネルによる自家利用の電力調達、再生エネルギー100%化をめざす電力調達などを進めている。コスト削減についてもKPIを設定して、世界の店舗とベンチマーキングを実施するなど、適切なFM活動を進めている。今後の総合的なFM活動への発展を期待したい。

◆ 奨励賞

日本マクドナルド株式会社

コミュニケーションと業務の質・スピードが向上できる FUNのある場

日本マクドナルドの本社オフィス改革の応募である。賃借ビルで22年間改修なしで過ごしてきたオフィスについて、移転ではなく現地での改修を選択した。2015年より検討を開始し、2017年7月より改修工事(玉突き移転)、2018年5月まで段階的工事と移転を行った。オフィス改革の目的とゴール、オフィスづくりの方針は妥当である。改修後のワークプレイスはグループアドレスによるABWで、面積を25%削減した。POEの結果も良く、経営陣のリーダーシップのもとに改革に取り組んでいる姿勢は評価できる。今後、FMの組織体制が整備され、継続性が担保されるよう期待する。

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